創立60周年を迎えて
~ 企業と社会で活躍する「高専人財」と「高専人脈」~
都城工業高等専門学校同窓会「深山会」会長
久保秀夫
久保秀夫
高等専門学校、いわゆる「高専」の制度は昭和37年に始まりましたが、我が母校の都城工業高等専門学校(以下、都城高専)は3期校にあたり、昭和39年(1964年)の東京オリンピックの年に開校しました。人間でいうなら、還暦(60歳)を迎え60年の歴史と伝統が新たな時代を迎えようとしています。創立以来60年を経て、7,800名の卒業生は、日本の生産、研究開発の現場だけでなく、世界でも腕に自信のある高専人財として活躍し、高い評価を得ています。
時代の変化と共に、この60年間で高専を取り巻く環境はおおきく変化しています。創立当初の高度経済成長期に産業界、経済界の強い要望で生まれた高校、大学の7年間の授業を5年に凝縮し、大学レベルの専門知識や技術を身に着け産業界の現場で即戦力となる技術者を育てるという日本独自の教育システムは、世界からも注目を浴び、今やモンゴル、ベトナムやタイ等の経済成長の著しい国々にKOSENが誕生し、都城高専は全国51校の国立高専のモンゴル支援幹事校として、モンゴル高専の教育及びキャリア支援を推進し、モンゴル高専出身の人財が日本の企業に就職するなど国際貢献と同時に地域社会に貢献しています。
一方、現在では、5年間の教育課程(本科)を終えた学生は、すぐに企業へ就職する以外に大学3年次への編入学や高専専攻科等への進学の道も開かれ毎年50名程度が進学しており、さらに大学院へと進み博士号を取得するなど、高専生の進路選択肢は広がり多様化しています。また、「リケジョ」と呼ばれる理系女子の割合が創立当初とは比較にならない程ダイバーシティが進んでいます。
都城高専同窓会「深山会」は、北は関東から南は鹿児島まで全国に8支部があり、毎年各支部で開催される同窓会には多数の同窓生が集いますが、同窓生の中には、従来の重厚長大の『ものづくり』の上場企業の役員になった人、近代のデジタル社会で半導体製造や人工知能(AI)開発等の最先端技術者になった人、或いは、自分で起業して社長になった人、また、研究者や教師になった人など、さまざまな人生を歩んでいますが、すべての同窓生が共通して誇りに思うことは、「都城高専で学んだということ」です。この誇りと自信を胸に刻み、みな励んでいます。
同窓会では、都城高専出身と聞いただけで、同じ都城高専で5年間学んだという不思議な連帯感や強い絆が生まれ、自然と「都城高専人脈」が出来上がります。現在、都城高専卒業生の求人倍率は20倍を超え、就職率は100%です。これも、ひとえに創立以来60年間、都城高専から日本の産業界に輩出された高専人財である先輩諸氏が企業からの期待に応え高い評価を受け続け、日本産業の成長に貢献しているという、長年のたゆまぬ努力によって築き上げられた実績のおかげです。
都城高専同窓会「深山会」は、都城高専出身者の縦と横のつながりの人脈を活かした新たなビジネスの創造と構築、母校のロボコン等のクラブや研究活動への支援や寄付、各種イベント開催、OB・OGが講演する就職支援講演会や合同企業説明会によるキャリア・就職支援等を手掛ける都城高専の応援団です。創立60周年を記念して都城高専キャンパスでハナミズキの苗木を植樹しましたが、ハナミズキの花言葉『永続性』のように、今後の母校の益々のご発展をお祈り申し上げます。